主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期感染症への対応を再考する−これからの課題と対策−
回次: 41
開催地: 愛知県
開催日: 2023/01/13 - 2023/01/14
p. 70-73
背景
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus,CMV)はヘルペスウイルス科βヘルペスウイルス亜科サイトメガロウイルス属の2本鎖DNAウイルスである。既感染者の唾液腺や尿細管,性腺,乳腺などに潜伏感染し,唾液や尿,性腺分泌液,乳汁などの体液中に間欠的に分泌される。未感染者が,既感染者からのCMVを含む飛沫や体液と接触することで新たな感染が生じる。健常人の感染では,不顕性感染が大部分であるが発熱や咽頭痛,リンパ節腫脹,稀に肝炎を呈することがある。
CMV母子感染には経胎盤感染,経産道感染,経母乳感染のすべてが含まれるが,経胎盤感染による胎児への感染(先天性CMV感染)が最も問題となる。先天性CMV感染児の症候には小頭症,脳室拡大,脳室周囲嚢胞,脳内石灰化,胸腹水,腸管高輝度エコー,肝脾腫,胎児水腫,胎児発育不全,small for gestational age(SGA),羊水量の異常,聴覚異常,脳画像異常,網脈絡膜炎,黄疸,肝機能障害,血小板減少,等がある。また,後障害には聴覚異常,精神発達遅滞,運動障害,てんかん,等がある。
先天性CMV感染の発生には2つの母体シナリオがある。初感染シナリオでは,母体が妊娠前は未感染だが妊娠中に感染(初感染)し,児に感染が生じる。非初感染シナリオでは,母体が妊娠前から既感染だが妊娠中に再感染/再活性化し,児に感染が生じる。初感染シナリオの詳細は明らかになってきているが,非初感染シナリオの詳細はまだ明らかでない。
今回,三重県において先天性CMV感染児の発生の初感染シナリオについては検証を行い,非初感染シナリオについては非初感染シナリオ症例の存在を確かめた。