主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:周産期の栄養と代謝を考える
回次: 42
開催地: 茨城県
開催日: 2024/01/26 - 2024/01/27
p. 90-94
背景
世界中で約10〜20%の子どもたちが精神的あるいは行動上の問題を経験しており,子どもたちのwell-beingに大きな影響を及ぼしている1)。特に子どもではメンタルヘルスの悪化は行動上の問題として現れることがあるため,行動上の問題のリスク因子の特定とその予防が重要だ。
妊娠中の体重増加量は,不十分な場合も過剰な場合も,子供の神経発達やその後のメンタルヘルスに影響を及ぼす可能性がある。具体的には,妊娠中体重増加量が不足している場合,胎児の海馬形成やセロトニン系機能に悪影響を及ぼしうる一方2),過剰な体重増加の場合,母親・胎児の炎症性サイトカインの増加等を通じて,子どもの神経発達に関連しうる2)。
この問題に関する疫学研究はいくつか報告があるが,いずれも白人を対象としており,結果は一貫していない3,4)。また日本人を含むアジア人は白人と体格や体組成が異なるため,これらの知見をそのまま本邦の妊婦に当てはめることはできない5)。さらに,既存のエビデンスは主に子どもの自閉スペクトラム症や注意欠陥多動性障害といった疾病に焦点を当てており,向社会的行動のような発達上のポジティブな側面は十分に研究されていない。向社会的行動は,子どものQOL向上や長寿との関連が知られており,特に重要である6,7)。
そこで本研究は,6〜7歳の日本人小児における妊娠中体重増加量と行動上の問題・向社会的行動との関連を検討することを目的とした。