周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第6回
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シンポジウム II:胎児仮死および新生児仮死:診断と治療
胎児Behaviorからみた胎児仮死の診断
大草 尚佐藤 郁夫谷野 均泉 章夫
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p. 109-117

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抄録

 はじめに

 これまでfetal distressの診断には,分娩監視装置による胎児心拍数図,陣痛図が最もルーチンに用いられ,またその精度の向上ともあいまって妊娠中のfetal well-beingや胎児高位中枢の生理的発達の指標としても日常診療に応用されている。しかしながら分娩監視装置で異常心拍パターンを呈しfetal distressの診断が下されれば,妊娠継続は困難で帝王切開を含む急速遂娩をせざるを得ないのが現状である。

 今回われわれは,種々の原因で胎盤の機能が低下し,その結果hypoxiaを疑わせる症例がnonreactive, decreased variability, decelerationなどの異常心拍パターンを呈する以前に,心拍パターン上,あるいは胎児behavior上,fetal distressを予測する指標が存在するか,またfetal hypoxiaの症例に対して長時間酸素を投与し,心拍パターンや胎児behavior上変化がみられるのか否かを検討することを目的とした。

 ところで,図1, 2は妊娠30週以降の同一症例の心拍数図であるが,図は1Obpmの不規則な振幅を有するFHR patternの中に,accelerationがなく,LTVの小さな,胎児behavior上も胎動や眼球運動を伴わない,われわれのいうinactive phaseが挿入されてくることを示している。このinactive phaseは妊娠30週頃は3~5分程度の持続時間にすぎないが,週数とともに持続時間は妊娠36週で11分,妊娠40週で27分と延長するようになる。今回,特にこのinactive phaseの出現状況に注目した。

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© 1988 日本周産期・新生児医学会
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