日本義肢装具学会誌
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装具の底屈制動モーメントによる片麻痺者の歩行の改善点
櫻井 愛子山本 澄子田澤 英二高橋 正明関屋 〓
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2007 年 23 巻 2 号 p. 147-158

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抄録
本研究では, 装具なし歩行時と装具歩行時の体幹の動きを比較し, 装具の底屈制動モーメントにより片麻痺者の歩行時における非対称な体幹の動きが改善するか否かを明らかにすること, Heel Rocker が生じる時期である Initial Contact (以下, IC) から Loading Response (以下, LR) の体幹の動きが, Mid Stance (以下, MSt) における足関節を中心とした身体の前方回転 (Ankle Rocker) に与える影響について検討することを目的とした. 対象は片麻痺者14例とし, 3次元動作解析システムを用いて計測した. 装具なし歩行と装具歩行時の上部体幹角度, 骨盤角度, 骨盤に対する上部体幹の相対角度, 下肢関節角度を求め, 歩行1周期における角度変化とIC~LRにおける骨盤の非麻痺側方向への回旋ピーク値, 足関節底屈角度ピーク値を算出した. その結果, 装具なし歩行と比較して, 装具歩行では骨盤回旋角度のパターンの変化が大きく見られたが, 骨盤に対する上部体幹の相対角度には変化が見られない症例が多かった. また, 装具の使用によりIC~LRの過度な足関節底屈と麻痺側への骨盤回旋が小さくなった片麻痺者ではMStの足関節背屈方向への動きが生じていたが, IC~LRの過度な麻痺側への骨盤回旋が改善しなかった片麻痺者は, 必ずしもMStの足関節の背屈方向への動きに改善が見られなかった. これらのことから, IC~LRの滑らかな足部の接地に伴い骨盤が非麻痺側方向へ回旋することが, その後の Ankle Rocker を生じさせる要因の1つであることが示唆された.
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