女性心身医学
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産後1ヵ月の母親の育児困難感とその他の育児上の問題,家族機能との因果的関連
神崎 光子
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2014 年 19 巻 2 号 p. 176-188

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抄録
【目的】母親の育児ストレスの本態とされる育児困難感とその他の育児上の問題,家族機能の因果的関連を明らかにすることを目的とする.【方法】産後1ヵ月の母親498名を対象として無記名の自記式質問紙による横断的調査を行った.調査内容は,育児上の問題:育児支援質問紙(0〜11ヵ月用)(川井ら2000),家族機能:Family Functioning Scale(FFS)日本語版(神崎ら,2012),属性,夫の家事育児参加への満足度,外部からの育児サポートの有無で,264名を分析の対象とした.【結果】対象者は,平均年齢30.9歳,44.7%が初産婦で89.8%が核家族(n=237)であった.育児上の問題とFFSの間には,有意な負の相関(r=-.567,p=.000)がみられ,初産婦は「育児困難感」(t=2.76,p<.001),「Difficult Baby」(t=3.75,p<.000)が経産婦より有意に高かった.また夫の家事育児参加満足度の高い群は「母親の不安・抑うつ」が有意に低く,外部からのサポート無群は,育児上の問題がいずれも有意に高かった.「育児困難感」を従属変数,その他の育児上の問題,家族機能の各因子を独立変数とする重回帰分析を探索的に繰り返してパスモデルを作成し,共分散構造分析を行った.このモデルの適合度はGFI=.989,AGFI=.963,RMSEA=.020,χ^2=12.51(df=11,p=.352)であった.【考察】パス解析の結果,産後1ヵ月の母親の「育児困難感」の要因は「母親の不安・抑うつ」と「Difficult Baby」であり,家族の「情緒的絆」「外部との関係」「コミュニケーション」機能がこれらを抑制し,「役割と責任」「家族規範」「コミュニケーション」機能は家族の「情緒的絆」を強化する因果関係にある事が示され,家族機能の強化が育児ストレスの軽減に有効であることが示唆された.
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© 2014 一般社団法人 日本女性心身医学会
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