女性心身医学
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研究報告
幼児の子育てをする母親の不定愁訴と育児感情の特徴
—保育機関における子育て支援のあり方—
山西 加織渡辺 俊之
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2016 年 21 巻 3 号 p. 314-324

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抄録

【目的】母親の心身の健康支援を含めた子育て支援策の一助として,幼児の預け先別に,母親の不定愁訴と育児感情の特徴を明らかにすることを目的とした.【方法】幼稚園および保育所に通園する1歳から6歳児の母親を対象に,無記名自記式質問紙による横断的調査を行った.調査内容は,精神健康度を示す日本版GHQ12(The General Health Questionnaire),育児に対する負担感,不安感,肯定感を測る育児感情尺度,自覚する不定愁訴の症状の強さであった.【結果】幼稚園3園(373人),保育所6園(366人)に幼児を預ける739人の母親において(有効回答率64.9%),1)幼稚園児の母親に比べて保育所児の母親は精神的健康度が低く,2)幼稚園児の母親では育児感情の『育児への束縛による負担感』が高く,保育所児の母親では『育て方への不安感』が高かった.3)不定愁訴を自覚する母親は71.3%であり,幼稚園児の母親に比べて保育所児の母親のほうが不調を強く自覚していた.有訴率は「疲労感」「イライラ」「肩こり」「体のだるさ」の順で高かった.4)預け先とは無関係に,精神的健康度が低い母親と不定愁訴を自覚する母親は,育児への否定的感情が高く,肯定的感情が低い傾向にあった.幼稚園児の母親では家族形態や健康習慣の実践状況等の外部要因が否定的な育児感情に影響していたが,保育所児の母親では外部要因の影響はみられなかった.【考察】保育機関により特徴が異なることから,子育てをする母親の情緒的負担を軽減するためには,母親の実態に即した育児支援策を検討すること,特に,母親の不定愁訴や生活特性の実態を踏まえた健康支援が必要であることが示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本女性心身医学会
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