女性心身医学
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研究報告
夫婦の抑うつ状態と児への愛着の関連性
塩谷 友理子我部山 キヨ子
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2021 年 25 巻 3 号 p. 183-190

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抄録

目的:出産後1カ月までの母親と父親の抑うつ状態と児への愛着の関連について検証する.

方法:出産後の母親と父親376組を対象とし,産後早期(産後1週間以内)と産後1カ月時点の計2回アンケートを実施した.アンケート内容は基本属性,エジンバラ産後うつ病自己評価票(以下EPDSとする),赤ちゃんへの気持ち質問票(以下,児への愛着とする),育児に対する自己効力感(PSE)尺度,夫婦関係満足度尺度から構成し,抑うつ状態(EPDS)との関連性を検証した.

結果:アンケート配布数は376組で,産後早期の回収数は母親307名,父親218名,産後1カ月時の回収数は母親149名,父親132名であった.産後早期と産後1カ月でEPDS 9点未満とEPDS 9点以上の群の比較では,児への愛着得点は,EPDS 9点以上の群において母親の産後早期と産後1カ月,父親の産後早期と産後1カ月で児への否定的感情が高かった(産後早期:母親p<.000,父親p<.02,産後1カ月:母親p<.003,父親p<.05).母親の育児に対する自己効力感尺度は,産後早期と産後1カ月においてEPDS 9点未満の正常群が有意に高かった(産後早期:p<.000,産後1カ月:p<.011).EPDS得点と産後1カ月時点の夫婦関係満足度については,母親・父親ともに有意な差はみられなかった.

結論:産後うつ病は児への愛着形成障害のリスクファクターと考えられ,精神状態が安定していることが児との絆を深め児への愛着形成に重要で,父親も含めた精神的サポートの充実や向上が必要であると示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本女性心身医学会
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