女性心身医学
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原著
精神科救急病院における周産期初診例の実態調査
中西 貴子堀川 直希吉島 秀和堀川 奈津子坂口 信貴堀川 公平
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2022 年 26 巻 3 号 p. 356-362

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抄録

周産期メンタルヘルスケアにおいては,精神科疾患発症ハイリスク妊産婦を検出してリスク評価し,多機関が連携する必要がある.のぞえ総合心療病院(当院)は,精神科救急病院として,周産期症例を受け入れてきた.周産期に精神症状が出現した症例は,緊急対応を必要とする場合が多い一方で,本人や家族が精神科受診を拒否したり,母児分離となることを不安に感じて入院受け入れに時間を要したりして,診療に苦慮することが少なくない.周産期に初診した妊産婦の実態を調査し,精神科病院における診療課題について検討した.2017年1月から2019年12月までに当院を受診した妊産婦は85例で,そのうち当院初診の48例を対象とした.初回妊娠が22例(45.8%)であった.29例(60.4%)で他院精神科通院歴があったが,妊婦健診を受けている産科で既往歴を伝えていない症例が少なくなかった.初診の時期は産後が34例(70.8%)で,産後3カ月から6カ月に多かった.24例(50%)が入院し,いずれも産後症例で,平均在院日数は52.5日であった.転帰としては21例(43.8%)が自己中断し,そのうち18例が6カ月以内に通院を中止していた.本調査から,精神科救急病院における周産期初診例は,産科での健診終了後の時期に受診する症例が多いこと,産科では精神科通院歴が把握しにくいこと,通院を早期に自己中断する症例の多いことが分かった.当院では,多職種で構成する周産期グループを作り,妊産婦や家族をサポートし,産科や行政機関との情報共有を行ってきた.精神科救急病院としては,精神症状出現時にすみやかに受診につながり,適切な通院治療となるような体制整備が必要である.

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© 2022 一般社団法人 日本女性心身医学会
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