2025 年 29 巻 3 号 p. 276
神経性やせ症(Anorexia Nervosa:AN)は,低体重,自己評価に対する体重,体型の不相応な影響等を中核症状とし,生命危機を伴う難治な身体・精神疾患です.ANは,女性に多く,思春期・青年期に発症年齢のピークがあり,無月経や骨粗しょう症,電解質異常,循環器系の身体合併症を伴いやすく,適切な治療と支援を提供することが重要です.モーズレイ神経性やせ症治療(Maudsley Anorexia Nervosa Treatment for Adults:MANTRA)は,症状維持要因に関連する,認知対人関係モデルに基づく,マニュアルベースの外来心理療法です.過去に複数のランダム化比較対照試験で効果が実証されており,成人のANに対して,ファーストラインの治療法の一つとして推奨されています.日本人を対象とした,MANTRAの実施可能性,効果については検証されておらず,日本における効果の実証と,治療法の普及に向けた研修会の開催に向けた取り組みが急務です.本発表では,MANTRAの背景と先行研究,動機づけ,認知対人関係理論に基づく,4つの症状維持要因-ANに価値を置く価値観,細部への焦点化,柔軟でない思考スタイル,感情における困難さ,親しい他者との対人関係の様式等に基づくケースフォーミュレーション,治療マニュアルを用いた治療の概要をご紹介します.