痛み感受性には明らかな性差が存在し,女性は男性に比べて痛覚閾値が低く痛みに敏感である.線維筋痛症や特発性歯痛などの痛覚変調性疼痛では女性患者が8割以上を占め,慢性痛や術後疼痛のリスクも高い.この性差にはエストロゲンやプロゲステロンなどの性腺ホルモンが重要な役割を果たしており,月経周期に伴う痛覚感受性の変動が臨床的に重要である.我々の研究では,本邦の若年成人女性においても黄体期は卵胞期と比較して熱痛閾値が有意に低下すること(20%以上)を実証した.さらに,月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)では,アロプレグナノロンを介した否定的情動の増悪が痛みの悪化に寄与する.本稿では,痛みの性差の生理学的メカニズムを概説するとともに,アロマテラピー,マッサージ,感情制御などの非薬物的介入による痛み緩和の可能性について,我々の研究成果を交えて論じる.