女性心身医学
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心身医学的アプローチが奏功した女性バセドウ病患者の2症例における心身相関について(ワークショップ 心身相関を考える : 症例検討)(<特集>第5回日本女性心身医学会研修会報告)
深尾 篤嗣
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2003 年 8 巻 2 号 p. 137-143

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抄録
我々はこれまで,バセドウ病を心身医学的に検討し,抗甲状腺剤治療後euthyroidでも多くの本症患者が神経症傾向を示し,同傾向やライフイベント,日常精神混乱,エゴグラム上のACが増悪因子となること,AやFCが早期の寛解に重要であることを報告してきた.今回,心身医学的アプローチを施した2例の女性本症患者についてその心身相関を検討した.(症例1)30歳女性,市役所パート勤務. X-3年12月,動悸,倦怠感,体重減少を主訴に近医を受診しバセドウ病と診断された.X-2年3月,隈病院を受診.2年半MMI内服加療を継続するも寛解せず,うつ状態も合併していたためX年10月,黒川内科紹介.内服加療と共に支持的面接を行ったところ,次第に対人関係における過剰適応への気付きが得られた.その後,実生活の中で,無理な頼みや嫌な誘いは断る等の行動変容が見られ,心理テスト上も,TEGのAの上昇, AC, SDSやTAS-20の得点の低下が見られた.その間,甲状腺機能を見ながらMMIを漸減していき,X+3年2月,5年目にして体薬できた.加えて,かつて過労の度に高熱を出していた患者が,今ではほとんど風邪もひかなくなった.(症例2)15歳女性. X-1年4月よりダイエットで56kgから38kgに体重減少し月経停止.過食,嘔吐も習慣化し,X年1月に黒川内科受診.甲状腺中毒状態,TSHレセプター抗体陽性の所見認め,バセドウ病と摂食障害の合併例と診断.抗甲状腺剤治療開始後,体重増加したことで肥満恐怖が増強し内服継続ができなくなったため母同伴で治療方針を再検討したところ,患者が当初拒否していた甲状腺亜全摘術を受諾.現在甲状腺ホルモン剤補償中も,精神的に安定し,体重40kg台を維持している.【結論】女性バセドウ病患者に心身医学的アプローチを施すことで,甲状腺機能完遂症および合併するストレス関連疾患を共に改善することが可能である.
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© 2003 一般社団法人 日本女性心身医学会
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