女性心身医学
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産科婦人科領域におけるsolution-focused approachの適用 : 月経前症候群に対する治療
松木 俊二楢原 久司井上 智恵子山口 美奈宮川 勇生
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2004 年 9 巻 1 号 p. 67-73

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抄録
Solution-focused approachは起こっている問題ではなく「症状がなくなればどんなことが変わってくるか」という解決像に焦点をあてた治療モデルである.月経前の強度の下腹痛を訴える1症例にこれを適用した.症例は30歳,1回経妊未経産.初経時からの強度の月経困難症のため平成11年にA医院で子宮内膜症の診断でGnRH asonist療法を施行中は痛みはなかったが月経再来で痛みは再び出現した.その後B病院とC病院で精査されたが子宮内膜症は否定的と言われ,鎮痛薬の処方をされたが軽快しなかった.その後D医院では子宮内膜症が疑われGnRH agonist療法を施行されたがA医院での加療と同様であった.月経再来後の平成14年6月に1〜2時間ごとの周期的な強度の子宮収縮痛を訴え当科に入院した.この間,鎮痛薬(ボルタレン^<[○!R]>,ポンタール^<[○!R]>)を1日10〜20錠内服することもあった.入院後の面接では,痛みに対する極度の不安,恐怖に焦点を当て,月経周期に関わる痛みは通常適切な量の鎮痛薬で対処できることを説明した後,「もしもこの痛みが軽くなったら何が変化してくるか」との方向付けを行ったところ,痛みの自己コントロールが可能となった.腹腔鏡検査では子宮内膜症やその他器質的な異常所見を認めなかった.現在外来通院中であり,痛みは少量の鎮痛薬でコントロールが可能となった.痛みの原因ではなく,「月経前の痛みがなくなればどんなことが変わってくるか」という解決像に焦点を当てたことは,患者に解決への期待を膨らませ,変化への手がかりを得させることにより症状を劇的に軽快させることができた.
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© 2004 一般社団法人 日本女性心身医学会
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