抄録
germin 及び germin-like proteins (GLPs) の遺伝子は多くの植物から分離されており、植物に普遍的に存在すると考えられている。また、GLP遺伝子はゲノム内に複数存在し遺伝子ファミリーを形成しているが、個々のGLPの機能についてはほとんど明らかになっていない。当研究室では、コケ植物から初めて細胞外にMn-SOD活性を持つタンパク質を分離し、それがGLPである事を明らかにした。
本研究では、植物におけるGLP遺伝子の分子系統進化を明らかにする事を目的とし、初めての陸上植物であるコケ植物に注目した。材料としては、遺伝子導入系が確立している蘚類ヒメツリガネゴケを用いた。
ヒメツリガネゴケではGLP遺伝子を含むクローンが68個データベースに登録されており、7種類の別々のGLPであった。これらのGLPには輸送配列が存在し、細胞外に局在すると予想された。これらのゲノム領域を得るため、ゲノムライブラリーをスクリーニングし、現在までに2種類のGLPのゲノムを得た。GLP配列をもとに系統解析を行うと、ヒメツリガネゴケのGLPは独自のサブファミリーを形成した。