日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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イネvirescent変異株(v1v3)を用いた葉緑体タンパク質の発現制御解析
*楠見 健介河野 智樹杉本 広樹戸澤 譲吉村 淳菊池 尚志射場 厚
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p. 130

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抄録
イネvirescent (v1v3) は温感受性突然変異株で、制限温度下で生育すると葉緑体分化が阻害され葉がクロロシスを起こす。これまでの解析から、virescent 遺伝子はP4と呼ばれる葉の発生初期のステージで機能し、プラスチド遺伝子の転写制御に関与することが示唆されている。本研究では抗体を用いて、転写装置を中心とした葉緑体タンパク質の蓄積パターンを調べた。野生株のP4ステージの葉においては、核コードRNAポリメラーゼ(NEP)(OsRpoTp)およびプラスチドコードRNAポリメラーゼ(PEP)のサブユニットタンパク質(RpoA, SigA)は、ともに顕著に蓄積していた。ところが制限温度下のv1v3変異株においては、これらが著しく抑制されていた。一方P5以降のステージでは、v1v3変異株では野生株と比較してプラスチドコードの葉緑体タンパク質の蓄積がほとんど観察されず、またLHCPやRubisCO小サブユニットなど核コードの葉緑体タンパク質の蓄積も著しく抑制されていることがわかった。これまで得られた知見とあわせ、これらの結果は、P4ステージにおけるNEPの活性化が葉緑体の遺伝子発現系構築の引き金であると同時に、核コードの葉緑体タンパク遺伝子の発現制御にも重要な意味を持つことを示唆している。V1V3遺伝子は現在クローニング中であり、その結果についても報告する。
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© 2003 日本植物生理学会
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