日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおける強光に応答した葉緑体遺伝子の転写制御
*蓑田 歩田中 寛高橋 秀夫
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p. 139

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抄録
光合成機能に関わる転写調節系とその進化の解明を目指し、私達はCyanidioschyzon merolaeをモデル生物としてその葉緑体転写制御の解析を進めている。C.merolaeはその単純な細胞構造に加えて、現在進行中の核ゲノム配列の決定に伴い、葉緑体と核のゲノム情報が利用できる非常に優れた研究材料である。核ゲノム配列の検索から、葉緑体の転写調節に関わると考えられる因子として、4種のシグマ因子遺伝子(SIG1~4)と1種のヒスチジンキナーゼ遺伝子(HIK)が見つかった。このHIKは、葉緑体ゲノムに存在する2つの転写因子Ycf27、Ycf29と2成分制御系を構成する可能性が高い。今回の解析では強光応答に伴う転写調節について調べた。C.merolaeを強光処理すると、4種のシグマ因子のうちSIG2のmRNA量のみが特異的に増加し、またHIKycf27の転写量もSIG2と同様に強光により誘導された。この結果からSIG2が強光への応答に関わるシグマ因子であること、HIKによるシグナル伝達を介して、Ycf27が強光下での葉緑体遺伝子の転写制御に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。強光下においてSIG2やYcf27によりどのような葉緑体遺伝子の発現が調節されているのかを知ることを目的として、C.merolaeの葉緑体DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現の挙動を現在、解析中である。
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© 2003 日本植物生理学会
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