抄録
植物におけるオルガネラRNAポリメラーゼRPOTは、シロイヌナズナに3種類存在し、それぞれミトコンドリア(Mt)、葉緑体(Cp)、そして両方へ輸送されることが知られている。両方に輸送されるAtRpoT;2はそのN末端配列中の2か所にMet残基(M1, M40)を持ち、M1から翻訳されるとCpに、M40から翻訳されるとMtに輸送されるとされている。ヒメツリガネゴケのPpRPOT1とPpRPOT2には、いずれもAtRpoT;2と同じように開始Metとなりうる2個のMetが存在する。PpRPOT1の5'-非翻訳領域と2個のMet残基(M1, M48)を含むN末端配列にGFPをつないだコンストラクトをヒメツリガネゴケのプロトプラストに導入したところ、GFPの蛍光はMtにのみ局在した。しかし、Metコドンのすぐ前にエンドウrbcSのtranslation leader配列をつなぎ強制的に翻訳させるコンストラクトを用いたところ、M1から翻訳させるとCpに、M48から翻訳させるとMtに輸送されることが分かった。また、M1とM48 の上流配列とGUS をつなぎプロトプラストでの翻訳効率を調べたところ、M1の上流配列からの翻訳はほとんど無いことが分かり、本来のコンテキストではM48から翻訳されMtに輸送されることが示唆された。このことは、単離CpとMtの転写のタゲチトキシン感受性の結果とも一致する。