日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ラン色細菌Synechocystis sp. PCC6803のチオレドキシンと活性酸素除去システム
*松田 直美野崎 晃子井上 和仁本橋 健久堀 徹
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p. 166

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抄録
チオレドキシン(Trx)は、高等植物の葉緑体やラン色細菌では、光化学系の電子伝達反応によって還元され、還元型Trxが標的となる蛋白質を還元することにより、それらの活性を調節したり、還元力の生体内での利用が可能になっている。Trxの反応中心が持つ2個のCysのうちの一方をSerに置換すると、標的蛋白質とTrxが結合したままの安定な中間体が得られる。この方法を利用して、我々は、すでに高等植物葉緑体のいくつかの新規の標的蛋白質を同定している。今回は、同様の方法を用いてラン色細菌 Synechocystis sp. PCC6803のTrxの標的蛋白質を網羅的に捕捉した。得られたいくつかの標的蛋白質候補の中でもっとも主要な蛋白質は、2種類のペルオキシレドキシン(Prx)ホモログと考えられる蛋白質であった。そこで、これらの蛋白質について大腸菌を用いて組み換え体蛋白質を作成し、その生化学的な性質を調べた。実際、いずれの蛋白質もTrxによって還元され、また、Trxの還元力を利用して過酸化水素を還元することができた。以上の結果は、ラン色細菌の活性酸素除去システムとしてTrx-Prx系が重要な役割を果たしていることを示唆している。
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© 2003 日本植物生理学会
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