抄録
演者らはシロイヌナズナのオーキシン依存性屈曲反応に欠損を持つ優性突然変異体msg2の原因遺伝子がAux/IAA遺伝子族の一つ、IAA19であることを示した。msg2の表現型異常は他の優性Aux/IAA突然変異に比べて特異的で、ほとんど胚軸の屈光性、屈地性、フック形成にしか異常が見られない。優性Aux/IAA突然変異は、変異により安定化したタンパク質が過剰に細胞内に蓄積して生じると考えられているので、本研究ではオーキシン依存性屈曲反応におけるMSG2/IAA19の役割を明らかにするため、IAA19過剰発現体を作製しその表現型を調べた。同過剰発現体を作製するために、CaMV35Sプロモーターの直下にIAA19全長cDNAを組み込んだ構築物をシロイヌナズナに導入し、約100ラインの形質転換体を得た。その中の1系統では暗所芽生え胚軸の屈地性、屈光性が減少し、根の屈地性も減少していた。この系統ではIAA19が野生型より約100倍強く発現しており、これらの異常な形質はIAA19過剰発現によるものと考えられる。また、msg2とは異なり、葉で著しい下偏成長が見られる系統もあり、msg2の特異的欠損がIAA19遺伝子発現の組織特異性に由来することが示唆された。野生型とIAA19過剰発現体の表現型や遺伝子発現様式を比較し、オーキシン依存性屈曲成長反応におけるMSG2/IAA19の役割について議論する。