抄録
我々は植物の病害抵抗性の誘導にグルタチオンが関与するのかを明らかにするため、自発的に過敏感細胞死様の細胞死を引き起こすシロイヌナズナのlsd mutantsを用い、還元型グルタチオン(GSH)あるいは酸化型グルタチオン(GSSG)を処理した後、PR-1蓄積と内在性グルタチオン含量との関連について調べた。lsd mutantsをlesion形成条件に移行すると2~4日で内在性グルタチオン量が増加し、その後PR-1の蓄積が誘導された。さらにlsd1に10-5 M GSSGおよびGSHを前処理、またlsd4に10-5 M GSSGを前処理すると植物体内に蓄積する総グルタチオン量が増加し、PR-1タンパク質も移行後早い時期から蓄積した。これらのことよりlsd mutantsでグルタチオン含量が早い段階で多く蓄積することによりPR-1蓄積が早い時期に誘導されると考えられた。さらにグルタチオン蓄積量の多さがPR-1誘導に影響を与えるのかを調べるため処理するGSSGの濃度について検討したが、グルタチオン蓄積量は10-5 Mよりも10-3 Mの濃度で処理した方が非常に多かったのに対し、PR-1蓄積はむしろ10-5 Mで処理した方が多かった。以上のことより、グルタチオン蓄積量が多いほどPR-1誘導に効果的というわけではなく、PR-1を誘導するためには至適な濃度のグルタチオンが必要であることが示唆された。