抄録
Rhodovulum sulfidophilumは、反応中心結合チトクロムが3ヘムであり、一般の4ヘムとは大きく異なる特徴がある。欠失したヘムは、4ヘムチトクロムでは可溶性電子伝達体からの電子受容部位であり、電子受容機構が異なることが予想される。本研究では、その電子伝達体について調べた。
これまでの研究で、分子量が30kDa付近の可溶性チトクロムc-549が主要な電子伝達体であることが示唆されていたが、そのチトクロムは培養後期のみに多く出現した。また、SDS-PAGEの泳動パターンから、近縁種における膜結合性電子伝達体チトクロムcyと共通点があることから、チトクロムc-549は本来膜結合性の電子伝達体であるものが、膜部分のペプチドから切断されて可溶性となった可能性が考えられた。膜結合性の電子伝達成分が実際に機能しているかを検討するため、スフェロプラストから可溶性成分のない膜標品を調製し、閃光照射実験を行ったところ、反応中心結合チトクロムの再還元が観察され、この菌には膜結合性の電子伝達体が存在し、チトクロムbc1複合体から反応中心結合チトクロムへの主要な電子伝達体として機能していると考えられた。これまで、そのような膜結合性の電子伝達体は、反応中心結合チトクロムを持たない紅色細菌でのみ観察されていたが、本研究により反応中心結合チトクロムを持つ菌にも存在することが示唆された。