抄録
クロロゾームを持たない緑色糸状細菌としてはじめて単離されたRoseiflexus castenholziiは、光合成反応中心複合体の構造と機能について、Chloroflexus aurantiacusと高い類似性がある。緑色糸状細菌における反応中心への電子伝達経路は、銅タンパク質であるオーラシアニンが反応中心への電子供与体であることが示唆されている点を除いて、ほとんど解明されていない。R. castenholziiは、バクテリオクロロフィルcを持たず、紅色細菌と同様に電子伝達系の分光学的測定が容易であることから、本研究では、光合成反応中心への電子伝達経路を明らかにするために閃光照射実験を行った。
膜標品に閃光照射すると、光酸化したチトクロムの再還元が認められ、膜結合型の成分がチトクロムを還元していることが示唆された。単離したオーラシアニンでも再還元がみられたことから、この成分はオーラシアニンであると考えられた。また、電子伝達阻害剤HQNOを添加して閃光照射すると、チトクロムの再還元速度が低下した。このことから、膜におけるキノール・オーラシアニン酸化還元酵素の存在が示唆された。以上の結果から、R. castenholziiにおける反応中心への電子伝達には、オーラシアニンと紅色細菌のチトクロムbc1複合体に対応するキノール・オーラシアニン酸化還元酵素が関与すると考えられた。