抄録
無機窒素源の吸収は植物体の要求に応じて厳密に制御されている。窒素源の取込・同化・移行という植物体全体における窒素吸収活性(以下吸収活性)は生育環境における窒素や光合成活性の変化に対応すると考えられる。PETIS (Positron Tracer Emitting Imaging System)は短寿命の放射性同位体を植物に与え、その吸収、移行をリアルタイムで計測できる。通常大気で生育したイネ(36Pa)と高CO2環境下で生育したイネ(110Pa)において、13NH4+を水耕培地に投与し、地上部に輸送されてくる13Nシグナルを検出しNH4+吸収活性を測定した。この結果、窒素源を含む水耕液中では、NH4+吸収活性は36Paより110Paの方が乾物重当たりにおいても高かった。3日間の窒素飢餓処理後におけるNH4+吸収活性は、両者とも窒素源を含む水耕液における活性より上昇した。その後同一個体を用いて2 mMの窒素源で2時間処理した場合のNH4+吸収活性を測定した結果、窒素飢餓処理後の活性と比較して36Paでは低下し、110Paは顕著に上昇した。同様に窒素飢餓処理後2 mMグルタミンで2時間処理した場合におけるNH4+吸収活性は、前述の窒素源処理とは全く逆の結果となり、36Paでは顕著に上昇し110Paでは低下した。NH4+吸収活性制御への窒素環境の変化と高CO2の影響を報告する。