抄録
我々は、シロイヌナズナトランスポゾンDs挿入変異体のリソースの中から、乾燥に著しく感受性を示す劣性の変異体slh1(sensitive to low humidity 1)を取得した。slh1はプレート中では正常に生育するが、幼植物体を土に移植すると、徐々に壊死班が現れて枯死してしまった。土に播種した場合には、本葉が小さく萎れた暗緑色になり、矮小化した植物体となった。slh1は高い湿度条件では生長し種子を得ることができたが、ABA噴霧では表現型は回復しなかった。透明化による顕微鏡観察により、葉の矮小化は細胞サイズの縮小によるものであることがわかった。マイクロアレイ解析の結果、病原体抵抗性に関与する遺伝子の変動が示された。ノーザン解析により、slh1植物体では、抵抗性関連遺伝子(PR1, PR2)、酸化的ストレス関連遺伝子(PRXc, GST)、プログラム細胞死関連遺伝子(SAG13)、Rgeneシグナリング関連遺伝子(EDS1)といった過敏感反応のマーカー遺伝子の恒常的な発現が認められた。さらに、slh1葉身において、トリパンブルー染色による死細胞と、アニリンブルー染色によるカロースと自家蛍光物質の蓄積を検出した。これらの結果より、slh1は自発的に病原体抵抗性反応を示す変異体であることが明らかとなった。Ds挿入位置は決定したが、現在相補性を確認している。