抄録
リン酸は生体内において様々な構成成分の合成および生化学反応に利用されており、生物にとって最も重要な栄養素の一つである。我々は、先にアルカリフォスファターゼ活性を指標に、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803におけるリン酸欠乏応答に関与する因子としてヒスチジンキナーゼHik7(sll0337)およびレスポンスレギュレーターRre29(slr0081)から成る二成分制御系を明らかにした。今回新たにDNAマイクロアレイを用いてリン酸欠乏応答性遺伝子の網羅的解析を行った結果、野生株では8時間のリン酸欠乏処理を施したところ、アルカリフォスファターゼ、リン酸トランスポーターなどの著しい発現誘導が確認された他に、7種の機能未知遺伝子の発現誘導が認められた。またHik7およびRre29欠損株を同様のリン酸欠乏条件下において解析したところ、リン酸欠乏応答性遺伝子の発現誘導がすべて抑制されていた。これらの結果から、Hik7およびRre29からなる二成分制御系は、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803の唯一のリン酸欠乏応答の制御系であると考えられた。