日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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タバコ傷害誘導性MAPキナーゼ、WIPKを活性化する新規ジテルペンの病傷害による蓄積と防御遺伝子誘導能
瀬尾 茂美瀬戸 秀春吉田 茂男*大橋 祐子
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p. 232

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抄録
タバコのMAPキナーゼであるWIPKは病傷害ストレスによりリン酸化され、活性化される。活性化されたWIPKは病傷害応答のシグナル伝達において重要な役割を演じていると考えられる。しかし、その活性化を引き起こす内生シグナルの実体は不明である。そこで、我々は、TMV感染タバコ葉からWIPK を活性化する物質を生化学的手法により単離し、機器分析によりその構造を決定したことを前本学会において報告した。この物質(WAF-1)は、新規なラブダン型ジテルペン化合物であった。この物質の有機合成にも成功し、合成品を用いたところ、nM濃度でWIPKを活性化した。
 今回、内生WAF-1の定量法を確立し、病傷害ストレスによる内生WAF-1量の変動を調べた。TMV感染タバコ葉では、壊死病斑の形成前にWAF-1が蓄積し始めること、その蓄積はWIPKの活性化に先行することがわかった。人為的に葉に傷つけても、内生WAF-1量が急速に増加した。また、nM濃度での外生WAF-1処理は傷害誘導性PR遺伝子群の転写産物の蓄積を高めた。これらの結果は、WAF-1がWIPKの活性化と傷害誘導性防御遺伝子群の発現誘導の内生シグナルとして機能することを示す。
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© 2003 日本植物生理学会
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