日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ヒメウキクサSpirodela oligorrhizaにおける高親和性リン酸トランスポーターの誘導
*長谷 昭錦織 美和奥山 英登志
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p. 238

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抄録
 リン酸飢餓条件下で成長したヒメウキクサSpirodela oligorrhiza(-P植物)は、リン酸十分条件下で成長した植物(+P植物)に比較し、50倍以上高いリン酸取り込み活性を示した。この-P植物におけるリン酸取り込みはCCCPにより阻害されることより、細胞膜を横切っての電気化学的プロトン勾配に駆動されることが示唆された。またリン酸取り込みの速度論的解析から、-P植物にはリン酸飢餓によって誘導される高親和性リン酸トランスポーターが存在することも予測された。そこで、高親和性リン酸トランスポーターの保存配列に対する抗血清を用いて、細胞膜タンパク質のウェスタンブロット分析を行ったところ、-P植物で大きく蓄積する強い疎水性の48 kDaタンパク質を検出した。一方、細胞膜H+-ATPaseのウェスタンブロット分析では、リン酸飢餓に伴う量的増加を検出出来ず、またATP加水分解活性も+P植物の方が高かった。しかし、ATPase活性及びプロトンポンプ活性の速度論的解析から、-P植物では低いKm値と高いH+/ATP共役比を持ったプロトンポンプが存在することが示唆された。
 以上の結果は、ヒメウキクサの-P植物におけるリン酸取り込み活性の大きな増加は、主に高親和性リン酸トランスポーターの誘導と細胞膜における蓄積に起因し、-P植物における高親和性・高エネルギー効率の細胞膜プロトンポンプが、その取り込みをリン酸飢餓下で促進していることを示している。
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© 2003 日本植物生理学会
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