抄録
コムギでは、根圏からのリンゴ酸の放出がアルミニウム(Al)耐性機構の一つと考えられている。これまでにコムギの準同質遺伝子系統ET8(Al耐性)とES8(Al感受性)を用いたサブトラクション法によりAl耐性株の根特異的に発現する遺伝子(ALMT1)を単離し、この遺伝子がAl活性化型リンゴ酸トランスポーターをコードすることを明らかにした。さらにALMT1には2つの対立遺伝子があり、Al耐性品種に共通の遺伝子型(ALMT1-1)とAl感受性品種に共通の遺伝子型(ALMT1-2)は互いに6塩基(アミノ酸で2残基)の相違があることも明らかにした。
本年度は、ALMT1遺伝子とAl耐性遺伝子(Alt1)との連鎖分析を行い、ALMT1遺伝子がAlt1と同一である可能性を検証した。ETとESの掛け合わで得られたF2およびF3世代植物において、Al耐性の表現型とALMT1の遺伝子型および転写量について調べた。その結果、Al耐性を示す個体は全てALMT1-1のホモおよびヘテロの遺伝子型を持ちかつALMT1遺伝子の高い発現を示すが、Al感受性の個体は全てALMT1-2をホモに持ちきわめて低い発現量であることが明らかとなった。したがってALMT1-1がAlt1遺伝子と同じであることが強く示唆された。現在シロイヌナズナとタバコなどにALMT1遺伝子を形質転換し、Al耐性が向上するかどうかを検討中である。