日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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キシログルカナーゼ導入ポプラの引張あて材誘導
*馬場 啓一Yong Woo Park林 隆久
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p. 276

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抄録
伸長成長終了後の肥大成長している高等植物の茎では、あて材形成によって重力に対する姿勢制御している。双子葉植物では屈曲側に引張あて材を形成し、その成長応力によって茎を曲げる。引張あて材の繊維細胞二次壁は正常材と比べてセルロースが多く、リグニンが少なく、ミクロフィブリル傾角が小さいなどの特徴を有するが、引張の成長応力を発生するメカニズムについては未だ明らかにされていない。最近、正常材の二次壁にはほとんど検出されないキシログルカンが、ポプラの引張あて材繊維細胞の二次壁(G層)中に含まれていることがわかった。そこでキシログルカナーゼ(XEG)を遺伝子導入したポプラを水平位置に倒し、引張あて材誘導実験をおこなった。
XEG導入ポプラも初期にはコントロール同様に肥大成長部位で反重力方向への屈曲を示し始めたが、次第に茎が捻れて上方への屈曲を継続することが困難となった。それぞれの茎の断面を観察したところ、いずれも同程度に引張あて材を形成していた。一方、伸長成長部位ではコントロール・XEG導入ポプラともに倒置処理後1日で偏差成長による重力屈性を正常に示した。これらことからキシログルカンは偏差成長による姿勢制御への関与は薄く、引張あて材形成による成長応力発生において重要な役割を演じていることが示唆された。
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© 2003 日本植物生理学会
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