日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナのCTP:ホスホリルコリンシチジリルトランスフェラーゼの遺伝子破壊株を用いたホスファチジルコリン生合成の解析
*稲継 理恵中村 正展西田 生郎
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p. 299

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抄録
植物の主要リン脂質であるホスファチジルコリン(PC)はCDP-コリンを経由するヌクレオチド経路で合成される.シロイヌナズナには,AtCCT1およびAtCCT2と命名した2つのCDP-コリン合成酵素の遺伝子が存在するが,我々は低温においてPC含量の増加とAtCCT2の発現増大とが相関することを報告した(Inatsugi et al. (2002) Plant Cell Physiol. 43:1342-1350).今回,PC合成におけるCCTイソ遺伝子の役割をさらに明らかにすべく,シロイヌナズナT-DNAタギングラインよりAtCCT1およびAtCCT2のT-DNA挿入遺伝子破壊株,cct1およびcct2,を単離した.cct2の脂質組成は23℃でも2℃・1週間の低温馴化処理後でも野生株のそれと変わりがなかった.この結果は,シロイヌナズナのPC生合成とその調節にはAtCCT1だけで充分であることを示している.さらに,かけあわせで作出したcct1 cct2二重遺伝子破壊株では,CCT活性が野生株の2%以下まで低下したものの, 23℃での成長と脂質組成は野生株とほとんど変わりがなかった.以上の結果は,シロイヌナズナのPC生合成は通常の2%程度のCCT活性で充分であるか,あるいは,ヌクレオチド経路にかわる未知のPC合成経路により補償される可能性を示唆している.
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© 2003 日本植物生理学会
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