日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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活性酸素消去能向上によるイネ耐冷性強化の試み(2)
*林 泰行中島 麻恵早川 孝彦藪田 行哲吉村 和也重岡 成宮坂 均
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p. 309

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抄録
イネは初期生長期に、比較的低温による障害を受けやすい事が知られている。幼苗の低温障害は、主に吸水阻害による萎凋と葉緑体内での活性酸素発生による葉の脱色の2つに分類できる。我々は、クラミドモナス由来葉緑体型Ascorbate peroxidaseのアスコルビン酸欠乏時の失活に対する安定性が、高等植物のそれに比べて高いことを明らかにした。この酵素をイネの葉緑体で発現させることで、イネのH2O2消去能を飛躍的に向上させ、幼苗期耐冷性を強化できる可能性がある。そこで、クラミドモナス由来Ascorbate peroxidase(APX)の遺伝子をイネに導入し、イネ幼苗の低温下での脱色耐性が強化されるか調べる事にした。遺伝子導入にあたっては、葉緑体移行配列部分を除去したクラミドモナスAPXcDNAの、N末側にイネGlutamine synthaseの葉緑体移行配列部分、C末側にほうれん草APX由来チラコイド膜Stucking配列を付加した合成APX遺伝子を発現させることで、特に葉緑体チラコイド膜近傍でのH2O2消去能を強化することを狙った。遺伝子発現が確認できた形質転換体では、当代植物体および次世代植物体でパラコート耐性が強化されており、当代植物体の葉切片を用いた耐冷性検定では低温脱色耐性が強化されていた。今回は導入したT2分離世代の幼苗を用いた低温耐性検定の結果を報告する。
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© 2003 日本植物生理学会
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