抄録
目的 アジサイ (Hydorangea macrophylla ) は、環境要因の微妙な変化により花色が変異する。我々は、アジサイの花色変異機構の解明を目指し、これまでに、単一細胞の液胞pH測定および数十個~数百個の有色細胞を集めての有機・無機成分の定量分析を行なってきた。今回、分析手法のミクロ化を目指し種々検討を行なった。さらに、青色アジサイにデルフィニジン3-グルコシド (1) 以外のアントシアニンが含まれることがわかったので、その単離を行ない、青色発色への影響を調べた。
方法及び結果 ガク片より既報[1] に従いプロトプラスト混合物を得た。これより、顕微鏡下マイクロマニピュレータを用いて着色細胞だけを収集した。内径 0.3 mmφ のODSカラムを用いるミクロHPLC分析法により1個の着色細胞で有機成分の定量が実現できた。さらに、徹底した容器洗浄とクリーンルームでの試料調製およびフレームレス原子吸光法により50細胞でのAlの定量分析が可能となった。また、青色ガク片よりアントシアニンを単離し、デルフィニジン3-サンブビオシド (2) と同定した。2をpH4の緩衝液中で3当量の5-O-カフェオイルキナ酸 (3) および1当量のAl3+と混合したところ、1よりも吸収極大波長が数nm長い青色溶液を与えた。
[1] 外山友紀他、日本農芸化学会2001年度大会要旨集、pp. 239.