抄録
シロイヌナズナのトライコ-ムは、葉の表皮細胞が分化して生じる毛様の巨大細胞で、有糸分裂無しに染色体DNAの複製を繰り返すendoreduplicationによる巨大核を有している。このトライコームの発生過程において、CDKA(Cdc2a)の発現が確認されている。
CDKAのトライコームでの発現時期と細胞内局在を詳細に調べる為、CDKA-GFP融合タンパク質をCDKAプロモーターによりシロイヌナズナに発現させて、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、CDKA-GFPはトライコームの発生初期に発現し、主に核に局在していた。これにより得られた知見を基に、トライコームの発現過程においてCDKAと複合体を形成する可能性のあるサイクリンを予想した。CDKAプロモーターのmRNA転写開始点から-591/+4の領域(P')を用いるとCDKAのトライコームを除く発現がほぼ無くなることを利用し、P'でCDKA-GFPをシロイヌナズナにトライコーム限定で発現させ、GFP抗体で免疫沈降して共沈タンパクとして予想されるサイクリンが検出されるかどうかを調べた。その結果、トライコーム発現CDKA-GFPと複合体を形成するサイクリンの1つを特定することができたので、これについて報告する。また、トライコームにおけるendoreduplicationに、特定されたCDKA/サイクリン複合体がどう関与しているかについても検討を行った。