抄録
最近、シロイヌナズナにおいて、His-Aspリン酸リレー情報伝達因子のヒスチジンキナーゼAHK4/CRE1/WOL1がサイトカイニンの受容体として機能することが示された。また、AHK4のホモログであるAHK2とAHK3もサイトカイニン受容体として機能する。His-Aspリン酸リレー情報伝達系はHis-キナーゼ、ヒスチジンホスホトランスミッター(HPt)とレスポンスレギュレーター(RR)から構成される。シロイヌナズナにはHPtをコードする遺伝子(AHP)が5種類、RRをコードする遺伝子(ARR)が22種類存在するが、ARRは一次構造の違いからタイプAとタイプBに分類される。このような状況から、サイトカイニンの情報伝達にAHK2/3/4→AHP→ARRという多段階のリン酸リレー系が関与することが考えられる。しかし、これらの因子がどのような組み合わせで情報伝達系を構成し、どのような高次機能制御に関わっているかについての知見は乏しい。
ここでは一群のタイプA ARRに焦点をあて、サイトカイニン情報伝達への関与とHis-Aspリン酸リレーネットワークの中での位置づけという観点から解析を行い、発現パターンの詳細な解析、細胞内局在性の同定、他のHis-Aspリン酸リレー情報伝達因子との相互作用解析に加え、過剰発現体及び遺伝子破壊株の解析結果を報告・考察する。