抄録
我々は、イネでアクチベーションタギング法を利用した突然変異体の取得及び原因遺伝子の単離が可能かどうかを調べる目的で、現在までにアクチベーションタギングラインを約8000作製した。これらのラインでは4コピーの35Sエンハンサー及び35SプロモーターがT-DNAタギングにより導入されている。
8000ラインのうち栄養成長期に顕著な変異形質を示すものとしてlesion mimic変異体が1ライン、stripe変異体が8ライン、針状の葉身を持つ変異体が1ライン得られている。このうちlesion mimic変異体について詳細に解析した。導入されたT-DNAは1コピーで、次世代25ラインを調べた結果変異形質は優性に遺伝しT-DNAとのリンクが認められた。更にTAIL-PCR法によりT-DNA隣接配列を増幅後、塩基配列決定、相同性検索を行ったところT-DNA挿入部位の500bp下流にORFが見いだされ、タバコの過敏感反応が起こる際に誘導されてくる遺伝子との相同性が認められた。上記の25ラインについて、この遺伝子の転写レベルをノーザン解析で調べた結果、転写レベルの強いものほど病徴の激しい傾向がみられた。現在この隣接遺伝子の転写活性化がlesion mimicの表現型をもたらしたことを証明するために再導入実験などを進行中である。
本研究はイネ・ゲノムプロジェクトMP-1202により行った。