抄録
クロロフィル・ヘムなどのテトラピロール化合物は、十数段階の酵素反応により生合成される。これまで、代謝系の特定の段階を触媒する酵素において、環境応答や発達段階において異なる遺伝子発現制御を受けるアイソザイムが存在し、それらが制御段階としてテトラピロールの生合成を調節していることが示されている。しかし、他の制御段階との協調的制御また代謝系全体の統御機構についての知見は未だに乏しい。そこで今回我々は、シロイヌナズナよりテトラピロール合成系に関与する全ての酵素(アイソザイム)を網羅し、かつ各遺伝子の特異的な発現解析を可能にするためのミニアレイの作製を行った。まずシロイヌナズナの全ゲノム配列より、計35のテトラピロール合成系遺伝子の塩基配列情報を得た。アイソザイムを構成する酵素については、それぞれの遺伝子特異的な領域を検索し、最終的にすべての酵素遺伝子について200~300 bpの遺伝子特異的な領域をRT-PCRにより増幅し、ミニアレイ作製のためのプローブとした。ゲノムサザン解析により全てのプローブが単一の遺伝子とハイブリダイズできることを確認後、光や植物ホルモン応答遺伝子などと合わせて計48プローブを、最終的にナイロン膜に高密度スポットし、ミニアレイを作製した。本ミニアレイを用いて得られた、光や植物ホルモン応答性また組織特異的な遺伝子発現解析による、テトラピロール合成系遺伝子の制御機構について報告する。