日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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酸素発生型光合成の成立に伴うクロロフィル合成系の進化の一局面:ラン藻Plectonema boryanumにおける二つのプロトクロロフィリド還元酵素系の酸素濃度に応じた機能分化
*山崎 将司藤田 祐一
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p. 478

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抄録
 ラン藻を始めとする多くの光合成生物は、進化的起源の異なる二つのプロトクロロフィリド還元酵素;光非依存性酵素(DPOR)と光依存性酵素(LPOR)、を用いてクロロフィル(Chl)を合成している。今回、二つの酵素の種々の酸素濃度条件下における機能分化に関して検討した。
 ラン藻Plectonema boryanumのDPOR欠損株、LPOR欠損株及び対照株(野生株)を、強光条件下(>250 μE m-2 s-1)において、酸素を0%~21%(v/v) 含む N2-2%(v/v) CO2ガスを通気しながら、光独立栄養的に培養した。DPOR欠損株は、いずれの酸素濃度下でも対照株と同じように生育した。一方、LPOR欠損株は、O2 5%以上では生育できなかったが、酸素濃度の低下に従って増殖が回復し、O2 0%では対照株の約62%の生育速度で増殖した。この結果は、LPORは5%以上の酸素濃度下ではChl合成に必須であることを示しており、また、ニトロゲナーゼと類似性を示すDPORは、酸素に対し不安定な酵素であることを示唆している。
 黎明期の光合成系では、Chl合成にはDPORのみが用いられてきたが、酸素発生型光合成の成立に伴い、祖先ラン藻は、新たに生じた酸素に富んだ環境下においてもChlを滞りなく合成するために、DPORに加えて酸素非感受性のLPORを新たに創出したことが推察される。
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© 2003 日本植物生理学会
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