抄録
クロレラを有機栄養存在下・暗所で培養すると、通常の2000-4000倍のZnを含む培地でも、1-2ヵ月のlag phaseを経て細胞は生育し始める。今回は、この生育に伴う光合成色素類の変動をODS-120T(TOSO)逆相カラムを用いたHPLCによって解析し、細胞生育の定常期にZn-Chl aが徐々に蓄積することを見出した。(1) lag phaseにはChlideのみが検出される。Chl類の合成は細胞の増殖に伴って起こるが、log hase初期にはPheo aが主であり、少量のChl bがChl aに先立って一時的に蓄積した。(2)stationary phaseに入ると Chl aが主となるが、時間と共にZn-Chl aが蓄積し始め、最終的にはChl aの10%程度に達した。(3) 通常培地で育てた細胞で、log phaseに酸化型Chl aが一時的に多量に検出される他は、Pheo aやZn-Chlなどの異常なChl類は検出されない。(4) 低温におけるChl aの蛍光は、early log phaseではF685が高く、log phaseの間にその蛍光収率は低下し、stationary phaseでは逆にF725が徐々に高くなった。(5) 以上の結果から、生成したZn-Chl aは光合成膜中に取り込まれ、アンテナとして機能しているものと推定された。