日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナTCP10遺伝子は細胞分裂を正に制御する
*武田 泰斗加藤 友彦佐藤 修正田畑 哲之上口 智治
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p. 489

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抄録
シロイヌナズナ TCP10 遺伝子は、高等植物に固有の DNA 結合ドメインである TCP ドメインを持つ蛋白質をコードしている。TCP 遺伝子群は高等植物の器官の生長制御を通じて植物個体の最終的な形態決定に関与すると考えられており、その分子機構に興味が持たれている。TCP10 遺伝子の生物学的機能を解明するため、T-DNA 挿入変異株 tcp10-1 を単離した。この変異のホモ接合体は芽生え、葉柄、花茎や花器官において顕著な矮性形質を示す。変異体の花茎は野生株の約 1/8 程度にまで短縮するが、細胞の大きさや形状には特に異常は認められない。芽生えの胚軸においても表皮細胞の細胞数の減少が認められ、矮性表現型の原因が細胞伸長の欠如ではなく、細胞数の減少にあることがわかった。核内倍数性解析から、tcp10-1 変異体は野生株に比べて倍数性核の割合が減少しており、細胞分裂活性の低下を示唆する。一方で TCP10 過剰発現体は倍数性核の割合が増加し、胚軸表皮細胞の伸長、ひいては胚軸自体が伸長する表原型を示した。TCP10 遺伝子の発現は、発生後期の胚全体、本葉、茎頂分裂組織や花芽分裂組織などの分裂活性の高い部位で認められた。以上の結果は TCP10 遺伝子産物が、細胞周期の G1/S 移行に必要な因子であり、細胞分裂活性を正に調節することで植物の生長を制御するものであることを示唆する。
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© 2003 日本植物生理学会
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