抄録
低窒素条件下におけるキュウリの黄化阻害に対するABAの作用
井上淳也1、岡真理子2、藤山英保2
(1鳥取大院・農、2鳥取大・農)
低窒素条件下で生育させた植物においては成熟葉から黄化が始まり、やがて植物体全体が黄化する。しかしながら、アブシジン酸(ABA)を添加すると葉の黄化阻害が認められた。この場合、添加したABAの濃度が高いほど無処理のものと比較してクロロフィル含量が増加しており、特にその効果は子葉において顕著であった。また、ABAの処理期間の影響を調べたところ、処理期間が2日間では無処理の場合と同様に植物体の黄化が認められた。しかしながら、2週間、4週間、6週間にわたってABAを処理したキュウリでは処理期間が長いほど黄化が顕著に阻害された。このことから、植物体の黄化は一過的なABAの影響により阻害されるのではなく、ABA が存在して作用することにより阻害されることが示された。低窒素条件下におけるこのようなABAの黄化阻害機構を明らかにするために植物体内の窒素含量を調べたところ、地上部・根ともに窒素量の増加が認められ、特に硝酸態窒素の増加が顕著であった。この結果から、低窒素条件下で生育させたキュウリにおいて、ABAは硝酸態窒素の吸収あるいは蓄積を促進することが示唆された。