抄録
光エネルギ-を化学エネルギ-へ変換する光化学系は数多くのコファクタ-とサブユニットを含む複合体を形成する。そこでの光化学反応機構は詳細に解析され、複合体タンパクをコードする遺伝子のクロ-ニングや発現制御の解析も活発に行われてきた。さらに最近では、複合体の三次元構造の解析が大きく進展した。しかし、光化学系複合体の構成成分がチラコイド膜へ分子集合する機構はほとんど理解されていない。緑藻Chlamydomonas reinhardtiiで光化学系1の分子集合に必須であるYcf4タンパクは、1800kDaの複合体(Ycf4-複合体)の成分であり、Ycf4にTAP (Tandem Affinity Purification)タグを融合すると、アフィニティクロマトグラフィ-で精製できることをこれまでに示した。本研究では精製方法を改善し、得られたYcf4-複合体の構成サブユニットを同定した。まずドデシルマルトシドで可溶化したチラコイド膜からYcf4-複合体をショ糖密度勾配超遠心とイオン交換カラムにより部分的に精製した後、アフィニティクロマトグラフィ-で精製を行った。得られた最終標品には、28kDaのYcf4の他に15~68kDaのサイズの14以上のバンドが検出された。数多くのサブユニットを含むことはYcf4-複合体のサイズが大きいという実験結果と一致する。