抄録
葉緑体ゲノムにコードされるYcf4は、光化学系1(系1)複合体のアセンブリーに必須のタンパクである。しかし、Ycf4タンパクが系I複合体の複雑なアセンブリー機構にどのように関与するかは不明である。本研究では、緑藻クラミドモナスのycf4遺伝子に部位特異的突然変異を導入し、系I複合体のアセンブリーが部分的に変異をもつクラミドモナスの形質転換体の作出を試みた。これまでにYcf4のN末端側から9と10番目、および17と18番目のアルギニンを正電荷のないグルタミンに一方ないし両方を置換した形質転換体( R9Q、R10Q、R9/10Q、R17Q、R18Q、R17/18Q )、Ycf4に2ケ所存在する膜貫通領域の間の親水領域の一部を欠失させた形質転換体、N末端側から2残基ずつ欠失させた形質転換体を作出した。これまでの解析の結果、R9とR10を置換した形質転換株では、LHCIを結合した系1複合体(PS1-LHC1 supercomplex)の蓄積量が減少していることが分かった。Ycf4は系1のコア複合体ばかりでなく、LHC1が系1コア複合体へ結合する過程にも関与することが示唆された。その他の形質転換体の系1複合体の分子集合が受けた影響を報告する予定である。