日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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マイコトキシンによるシロイヌナズナの矮化についての解析
*増田 大祐山口 和男木村 真山口 勇西内 巧
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p. 55

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抄録
 トリコテセンは植物病原菌であるFusarium属などが生産するマイコトキシンの一種であり、植物への感染過程で病原性因子として働くことが分かっているが、植物におけるその作用機構についてはほとんど分かっていない。我々は、トリコテセンの1つであるT-2 toxinを含むMS培地でシロイヌナズナを生育させると感受性に個体差があるものの、矮化や葉柄が短くなり、また葉がカールするなど特徴的な形態異常が起こることを見出した。またT-2 toxinによって葉肉細胞等が小さくなることから、細胞の伸張成長が抑制されていることが示唆された。このようなT-2 toxinによる矮化やその感受性の違いにおける遺伝子発現の変化についてGeneChipを用いて網羅的な解析を行った。その結果、発現が誘導される遺伝子には防御遺伝子が多く含まれ、恒常的な防御応答が矮化を引き起こしている可能性が示唆された。また、T-2 toxinにより発現が誘導される遺伝子の中には、ブラシノステロイドの不活性化に関与しているB.napusのsteroid sulfotransferaseをコードするBNST3遺伝子のホモログが含まれていた。さらに、発現が抑制されている遺伝子には活性型ジベレリンの合成に関わるGA4遺伝子が含まれており、これらの二つの遺伝子がT-2 toxinによって誘導される矮化に関与している可能性が示唆された。
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© 2003 日本植物生理学会
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