抄録
同化型硝酸還元酵素(Nitrate Reductase; NR)は植物の硝酸代謝経路における律速酵素として知られているが、植物体中で量が少なく精製の困難な酵素である。近年のNR活性調節機構解析やNRによるNO産生などの研究にはNRタンパク質が必要である。そこで酵母Pichia pastorisを宿主としたホウレンソウNRタンパク質発現系の構築を行った。
ホウレンソウNRcDNAからNRタンパク質中のFADドメイン、Cyt bドメインおよびHinge-1領域のリン酸化セリン残基をコードする領域(CcR+)を発現ベクターに導入し、形質転換酵母を得た。CcR+タンパク質発現量は約0.9mg/L cultureで、以前作製したFADドメイン、Cyt bドメインをコードする領域(CcR-)を導入した酵母と比較して1/100の発現量であった。そこでCcR-をコードする遺伝子の翻訳開始点直前の塩基配列を導入した新たなCcR+ベクターを作製した。これを用いた結果CcR+タンパク質発現量は約56mg/L cultureに増加した。次にホロNRをコードするcDNAに上記改変を加えたベクターを作製しNRタンパク質発現量を調べた結果、改変を加えない場合と比較して約10倍の約0.7mg/L cultureの活性を有するNR タンパク質の発現が見られた。