抄録
σ因子は葉緑体で働くバクテリア型RNAポリメラーゼ(PEP)のプロモーター認識サブユニットであり、シロイヌナズナでは 6種の核コードσ因子、sig1からsig6が存在している。近年、sig5の転写は他のσ因子とは異なり、赤色光では誘導されず青色光特異的に誘導され、これが、psbDなど特定の葉緑体遺伝子の青色光誘導転写の要因であることが示された。ここではsig5の青色光誘導転写に関わる青色光受容体について報告する。現在、青色光受容体として、シロイヌナズナではフォトトロピン(phot)1・2およびクリプトクロム(cry)1・2が知られており、これらの遺伝子欠損がsig5遺伝子の青色光転写誘導に与える影響を調べた。
野生株とphot1phot2またはcry1cry2遺伝子の2重欠損株を各々、連続光照射下で生育させた後暗所で24時間適応させた。RT-PCRによりsig5の転写量を比較解析した結果、いずれの株でも転写産物は認められなかった。次に、青色光または赤色光を強度5μmol・m-2・s-1で90分間照射後sig5の転写量を解析した。その結果、phot1phot2欠損株では野生株と同程度の青色光特異的なsig5転写産物の蓄積が認められたが、cry1cry2欠損株では顕著に低下し、sig5遺伝子の青色光による転写誘導には2種のcry1・2少なくともいずれかが関与していることが示唆された。