抄録
イネ科牧草である羊草(Aneurolepidium chinense)から塩ストレスで発現が誘導される遺伝子(AcPMP3)を単離した。羊草はモンゴル地方の半乾燥地帯に自生し、500 mMの塩化ナトリウムを添加した培養液中でも成育が可能である。そのため、この植物の環境適応機構を研究することは興味深い。
AcPMP3遺伝子は、2か所の膜貫通領域を持つ54アミノ酸残基からなる蛋白質を作ると予測される。AcPMP3はノーザン解析の結果より、培養液へ500mM の塩化ナトリウムを添加した場合のほかに、4℃の低温処理、乾燥などの環境ストレス条件下でも発現が誘導されることが示された。
また、塩ストレス条件下におけるAcPMP3の発現は、根の表皮や根端で認められた。高塩濃度に直接さらされる場所で発現しているこの遺伝子が、塩ストレス耐性に重要な役割を果たしているのではないかということが示唆された。
また、GFPとの融合蛋白質を酵母菌のPMP3変異株に導入して、その局在性を解析したところ、AcPMP3蛋白質が細胞膜に局在することを明らかにした。