抄録
イネ葯の発生及びその低温阻害に関連する重要遺伝子の機能解明のため、葯特異的タンパク質のプロテオーム解析を行った。本講演では、レクチンブロット法を用いた解析結果について報告する。
[方法]イネはファイトトロン自然光室(昼25℃夜19℃)にてポット栽培し、穂ばらみ期及び出穂期に葯を採取した。低温処理は穂ばらみ期に12℃4日行った。葯は緩衝液と共に磨砕、抽出液を濃縮、等電点電気泳動(IEF)、及びSDS-PAGEによりタンパク質を分離した。PVDF膜にプロッティング、HRP-レクチン溶液と反応後、発色処理しスポットを検出した。
[結果]葯に蓄積するタンパク質のCBB染色検出では、発育時期及び低温処理によって特異的かつ再現性よく発現変動するスポットはほとんど認められなかった。市販7種レクチン(ConA,LCA,PNA,PHA-E,RCAI,UEAI,WGA)を用いて検出できたタンパク質は小胞子期よりも出穂期に多く、また、マンノース結合型レクチン(ConA,LCA)との反応が強い傾向があることが判明した。次に、ConAによる詳細な発現解析の結果、穂ばらみ期特異的で、かつ低温処理により発現低下または上昇するタンパク質をそれぞれ80kD、44kD付近に見いだした。現在、80kDスポットに着目し、構造解析を試みており、その結果を報告する予定である。