日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナの受容体型プロテインキナーゼ ACR4 の表皮細胞分化における役割
*渡辺 勝田中 博和町田 千代子町田 泰則
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p. 588

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抄録
高等植物の表皮は個体表面を覆う一層の細胞層から成り立っており、水分の保持や病原体からの防御、さらに形態形成にも重要な役割を担っている。しかしながら、この表皮細胞の分化メカニズムは断片的にしか理解されていない。我々は表皮細胞分化の制御機構を明らかにする目的で、表皮細胞の性質が変化したシロイヌナズナの突然変異体を解析しており、トウモロコシの表皮細胞分化に関わる CRINKLY4 のシロイヌナズナホモログを単離し、Arabidopsis homologue of CRINKLY4 (ACR4) と名付けた (Tanaka et al., 2002)。ACR4 遺伝子は細胞外領域と細胞内のキナーゼ領域をもつ受容体型プロテインキナーゼをコードすると予測される。ACR4 遺伝子の生物学的な機能を調べるため、ACR4 遺伝子の T-DNA 挿入変異体を2系統単離した。acr4 変異体は劣性の変異体で、胚形成時には胚の原表皮細胞が野生型に比べて膨らみ、胚の輪郭が凸凹としていた。発芽後は低頻度で葉や葉柄が合着し、さらに胚珠や種子においても合着がみられた。透過型電子顕微鏡で種皮表面のクチクラを観察した結果、クチクラおよび最外層の細胞壁の形態が、野生型と比べて部分的に変化していた。本発表では、表皮細胞分化におけるACR4 遺伝子の役割について考察するとともに、現在当研究室で解析されている表皮細胞の性質が変化した変異体とacr4 変異体との二重変異体の解析結果についても紹介する。
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© 2003 日本植物生理学会
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