日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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顕微FT-IRによるシロイヌナズナ根毛突然変異体の解析
*冨永 るみ杉山 淳司岡田 清孝和田 拓治
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p. 587

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抄録
 シロイヌナズナの根の表皮細胞は根毛細胞と非根毛細胞に分化する。この根の表皮細胞分化はCAPRICE (CPC), WERWOLF (WER), GLABRA2(GL2), GLABRA3 (GL3), TRANSPARENT TESTA GLABRA1 (TTG1)遺伝子等によって制御されている。
 これらの遺伝子欠損株で、根の表皮細胞の細胞壁成分を顕微フーリエ変換赤外分光分析装置(顕微FT-IR)を用いて解析した。顕微鏡で特定した部位へ赤外線を照射し未知試料の定性や定量に用いられる顕微FT-IRは、シロイヌナズナの芽生えのような微小で化学分析が難しいと思われる生物試料測定に適している。
 シロイヌナズナの芽生えをBaF2の窓板に貼り付け、顕微FT-IRで透過法測定したスペクトルから多糖類、タンパク質のピークを含む1800 - 900 cm-1の範囲を抽出し、ベースライン補正、スムージング、標準化処理したのち主成分分析を行った。その結果、cpc-1, gl3-1, ttg1-1, wer-1突然変異体のスペクトルは野生型とほぼ同じであったが、gl2突然変異体では野生型に比べてセルロース、ヘミセルロース含量が増え、タンパク質量が減少していた。以上のことから、GL2遺伝子は根の表皮細胞の分化を制御するだけでなく、根の表皮細胞の細胞壁構築へも関わっていることがわかった。
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© 2003 日本植物生理学会
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