日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ジャガイモ塊茎における傷誘導性シトクロムP450遺伝子 (CYP72A29)の発現解析
*加藤 久晴
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p. 670

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抄録
根頭がんしゅ病菌 (Agrobacterium tumefaciens) を接種したジャガイモ塊茎ディスクより,腫瘍形成過程において発現が抑制される遺伝子の一つとしてシトクロム P450と相同性を示すDNA断片が得られた。RACE法により得られた完全長cDNAの推定アミノ酸配列からCYP72A29と命名され、系統樹解析によりナス科植物にユニークであることが示された。塊茎ディスクにおいて、CYP72A29は傷処理により一過的な発現誘導を受けたのちに恒常的な発現を示すようになるが、根頭がんしゅ病菌野生株あるいはIAAを恒常的に生産する根頭がんしゅ病菌組換体の接種により、この発現は完全に抑制された。2,4-D処理によっても抑制されることから、CYP72A29の発現はオーキシンによる発現制御を受けると考えられた。発現の抑制は、エリシターであるアラキドン酸処理によっても認められた。以上の発現様式は、これまでに報告されているフェニルプロパノイド合成系やアルカロイド合成系などの2次代謝に関与する遺伝子と類似していた。RT-PCRにより発現部位を調べたところ、萌芽塊茎の芽において高い発現が見られたが、他の組織においてはほとんど認められなかった。
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© 2003 日本植物生理学会
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