日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ジャガイモ塊茎組織中フェニルプロパノイド経路の代謝フラックスの測定
*松田 史生宮川 恒
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p. 671

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抄録
 ある代謝経路の活性の変化とは、その経路を流れる化合物量、すなわち代謝フラックスの増減を意味している。ジャガイモ塊茎組織に傷害を与えると、フェニルプロパノイド経路の活性化がおこり、chlorogenic acid (CGA) が顕著に蓄積する。一方、同じくフェニルプロパノイド代謝産物の一つであるN-p-coumaroyloctopamine (p-CO)の含量は生合成酵素が活性化しているにも関わらず微量しか増加しない。本代謝制御の詳細を明らかにすることを目的として、これらの化合物の生合成フラックスの実測を試みた。
 ジャガイモ塊茎からディスクを作成し、24時間後に10mM L-phenyl-d5-alanine 水溶液を処理した。経時的にディスクを回収し、抽出液中のCGAおよびp-COとその重水素ラベル体の含量をLC-MSで測定した。重水素ラベル体比の経時変化を表す式を、実測値に非線形回帰法で近似させ、CGAとp-COの生合成フラックスをそれぞれ 4.2 および 1.1 nmol / gFW/ h と求めることができた。以上より、生成したCGAはほとんどが蓄積するのに対し、同じオーダーのフラックスで生成しているp-COは速やかに代謝され、蓄積しないものと考えられた。
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© 2003 日本植物生理学会
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